七善様は、夢に見ると幸福をもたらすという逸話を持つ特別な人物。その目撃情報は耐えないが、今回はそのうち2名のエピソードを紹介する。
1人目
40代の女性は、2日前に起きた事故で最愛の夫を亡くした。突然の別れを受け入れることができず、女性はその日から2日間、ただひたすら泣き続けていた。悲しみと疲労は心だけでなく身体までも蝕み、もう限界だと感じていたその夜、女性は運命を大きく変えることになる不思議な夢を見る。
眠りに落ちた女性は、ふと、まぶたの向こう側がまばゆい光に満たされていくような感覚に包まれた。
本来なら眩しさを感じ起きるはずなのに、不思議とその光は温かく、どこか心地よいものだった。
やがて光の中に浮かび上がったのは、神々しい黄金色の輝きに包まれた一人の僧侶。
僧侶は穏やかな微笑みを浮かべながら女性を見つめ、まるでその悲しみをすべて理解しているかのように、優しく声をかけた。
「哀しみの長丁場、ご苦労様です。私が貴方の苦悩を払拭いたしましょう。」
僧侶は静かに手を合わせ、祈りを捧げ始める。
すると、辺り一帯を包んでいた光が一層強くなり、目の前にあるものすべてが、燦然とした美しい七色の輝きを放ち始めた。
その瞬間、女性の心の奥底から、これまで感じたことのないような勇気や希望が、泉のように湧き上がってくる。
それは深い悲しみに沈んでいた心が、少しずつ光に満たされていくような感覚だった。
そして翌朝。女性が目を覚ますと、すぐ隣には夫が眠っていた。
女性には、いったい何が起きているのか理解できなかった。
確かに2日前、夫は事故で亡くなったはずだった。
病院で医師から告げられた言葉も、部屋で一人、絶望に打ちひしがれた記憶も、震える手で焼香をつまんだ感触も、はっきりと覚えている。
あれほど鮮明だった記憶も、耐え難いほどの悲しみも、すべて現実だったはずなのに、夫が亡くなったという「事実」そのものが、まるで最初から存在しなかったかのように女性の現実から消え失せていた。
2人目
20代の男性は事故により右足の脛骨を骨折し、後遺症によって車椅子での生活を余儀なくされていた。
少しでも身体を動かせるようになりたい。その一心で、日々懸命にリハビリへ励んでいた。
そんなある夜、男性の夢の中に現れたのは、神々しい黄金色の光に包まれた、一人の僧侶だった。
「苦艱(くかん)の遷延、大変でしたでしょう。ご苦労様です。私が貴方の怪我を治しましょう。」
その夢を見た翌朝、男性の身体には驚くべき変化が現れていた。
それまで続いていた激しい痛みは大きく和らぎ、痛み止めを使わずとも日常を過ごせるほどにまで回復していた。さらに、その回復は日に日に加速していき、医師から「歩行まで回復するのは難しい」と告げられていたにもかかわらず、わずか1ヶ月後には自らの足で歩くことに成功したという。
七善様は、その存在を知るだけでも幸福をもたらすとされ、これまでに20名以上が存在を知ったことによって七善様からの幸福を得られたという。報告されている現象はさまざまだ。
悪夢を一切見なくなった、身近な人物に起きた不幸が、まるで最初から起きていなかったかのように消えていた。長く苦しんでいた病状が、突然快方へ向かい始めた。翌日、抱えていた悩みが思いもよらない形で解決した。思いがけない臨時収入が舞い込んできたなど。
いずれも偶然と片付けることのできる出来事ではある。しかし、それらが「七善様を知った・夢に見た直後」に起きているという共通点から、七善様によってもたらされた幸福なのではないかと考える者も少なくない。
また、日頃から人のために奉仕したり、周囲への感謝を大切にしている人物ほど、七善様が夢の中に現れやすいという説もある。