斎木(仮名)はハンバーガー屋のテーブルでハンバーガーセットの到着を待っていた。しかし、他に客がいないにもかかわらず、ハンバーガーセットは一向に届く気配がない。しびれを切らした斎木は、レジの店員に声をかけた。
「あーすみません。いつまで経ってもハンバーガーが届かないんですけど?」
斎木は話しかけてようやく店員が制服を着せた木の人形だということに気がついた。通りでいつまでもハンバーガーが届かないはずだ。斎木は呆れた。そこまでして接客をするのが面倒なのか。近頃のファストフード店も怠けてきたものだ。
仕方なく、斎木は自分でハンバーガーを作ろうとキッチンへ向かった。しかし、キッチンに入ってすぐに斎木は絶望した。
キッチンは一面、ネズミの溜まり場になっていたのだ。調理台の上には何匹ものネズミが包装紙に穴を開け、バンズや冷凍のパティをつついている。
「まったく、ふざけた店だ。」
ハンバーガーが無理なら、シェイクでも作ってやれ。もはや斎木は半ばヤケクソで、積み重ねられたカップを適当に一つ抜き取り、ドリンクサーバーにセットした。そして種類も確かめずにボタンをいくつか適当に押した。
サーバーは妙な機械音を立てた後、茶色く濁った液体を勢いよくコップに向かって注ぎ始めた。何のボタンだったのかは知らないが、液体からは酷い臭いがする。とてもじゃないが飲めたものじゃない。
斎木は諦めて帰ろうかとも思った。しかし、嫌な思いだけして帰るのもなんだか癪だ。そう考えながらカウンターを見回していると、そこにチキンナゲットの箱を発見した。
斎木は小躍りしながら箱を開けた。中にはしっかりとナゲットが入っている。これでしばらく空腹は満たせそうだ。そう思っていたその時、カウンターの下から何者かの手が伸び、開いたチキンナゲットの箱のフタを引っ張った。そのせいで箱はバランスを崩し、ナゲットを飛び散らしながら床へ落ちた。
「おいお前!何する!」
斎木は怒号を上げた。カウンターの奥を覗き見るとそこにはハットを被った、身長1メートルほどの小さな男が立っていた。
「わっ!ごめんよ!僕もお腹が空いててつい…。」
男は斎木にそう言って頭を下げた。その拍子にハットが脱げ、床に転がり落ちた。男は慌てた様子でハットを拾い、被り直す。やれやれ、なんだか厄介なやつが現れたな、と斎木は思った。
斎木「クソ…、腹が減った…。」
斎木の言葉に男は申し訳なさそうな顔をする。
そしてすぐに、男はキッチンの周辺を漁り始めた。
男「何か食べ物………うーん…。」
男は上半身を引き出しの中に突っ込み、浮いた足をバタつかせながら手探りで食べ物を探す。しかし、何も見つからないようだった。男に食べ物を先取りされるまいと、斎木も負けじと食べられそうな物を探した。引き出しを探し終えた男は次に冷蔵庫によじ登り、バランスを取りながら冷蔵庫の取っ手を引っ張って開けた。斎木は思わず声をかける。
斎木「おい、危ないぞ。」
フラフラと今にも転げ落ちそうな足取りをしながら男は返事をする。
男「気をつけまーす!」
ようやく、男は冷蔵庫の中から1切れのベーコンを見つけ出した。男は冷蔵庫から何とか無事に降りるとベーコンを斎木の前に差し出した。
斎木「え、くれんのか?これ」
男「うん」
斎木「お前も腹減ってんだろ?いいの?」
男「いいのいいの。さっきは悪いことしちゃったし、受け取ってよ。」
斎木「そうか…じゃあ、もらう。」
斎木はベーコンを一口で頬張った。腹が減っていたせいか、そのベーコンはやたらと美味しく感じた。その時、冷蔵庫から「バチッ」と火花音が飛び、黒い煙が上がった。男が無理に登ったせいで、配線がショートしたのだ。すると、カウンター前の木の人形が突如動き出し、男を取り押さえた。
「わわっ、許して!!僕お金払うから!」
男はポケットからパンダの顔型の財布を取り出し、急いでお金を払おうとしたが、その間もなく、男はそのまま人形たちによって事務室へと担ぎ込まれていった。
残されたのは、床に落ちた財布だけ。拾い上げると、裏には「フレディの財布!」と書かれていた。
心配に思った斎木は事務室のドアをノックし、中に入った。
そこでは4体の人形がフレディを縄で縛り、ダンボールに詰め込もうとしていた。
斎木「おいおい待て、やめろ!」
斎木はフレディを片手で抱きかかえて、全速力で店を飛び出した。だが、人形らは追ってくるような素振りを見せなかった。
フレディ「ひー、怖かった…。どうもありがとう。」
斎木「危なっかしいやつだな。あ、ほら、財布、落としたぞ。」
フレディは嬉しそうに財布を受け取り、深々と頭を下げた。その拍子にハットが脱げ、床に転がり落ちた。
斎木「お前、何回やるんだよ…。それ。」
そう言ったところで目が覚め、夢は終わった。